第142章

夕暮れ。大島莉理は結局、重たい足取りのまま玄関をくぐった。

入った瞬間、母の声が耳に飛び込んでくる。

「やっぱり今日の電話、あの子にきつすぎたって。帰って来られるかな……」

父の声は、どこかこもっていた。

「きつく言わなきゃ、帰ってこないだろ」

「帰ってこないのは誰のせいよ。あんたのせいでしょ!」母が噛みつく。「あんなふうに怒鳴りつけるから、家に戻りづらくなるのよ!」

「怒鳴ったのは、男ひとりのために仕事を投げ出すなんて――そんなことをしたからだ!」

その一言で、リビングの空気がすとんと落ちた。

莉理が小さく咳払いすると、ソファに正座するように腰を落とし、煙草を吸っていた父と...

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